欹
欹
名詞
標準
文例 · 用例
私は顔をきつくそむけて、もっぱら松島の風光を愛で楽しむような振りをしていたが、どうも、その秀才らしい生徒が気になって、芭蕉の所謂、「島々の数を尽して欹つものは天を指し、伏すものは波にはらばう、あるは二重にかさなり三重にたたみて、左にわかれ、右に連る。
— 太宰治 『惜別』 青空文庫
」 民弥は何か曖昧な声をして、「私は知らないがね、」 けれども一座の多人数は、皆耳を欹てた。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
磴たるや、山賊の構えた巌の砦の火見の階子と云ってもいい、縦横町条の家ごとの屋根、辻の柳、遠近の森に隠顕しても、十町三方、城下を往来の人々が目を欹れば皆見える、見たその容子は、中空の手摺にかけた色小袖に外套の熊蝉が留ったにそのままだろう。
— 泉鏡花 『縷紅新草』 青空文庫
ここに居ても、この声の聞えやせむかと、夜ごとに枕を欹てなどしつ。
— 泉鏡花 『照葉狂言』 青空文庫
」と喬は思い、耳を欹てるのであった。
— 梶井基次郎 『ある心の風景』 青空文庫
別に花々しく世のなかの視聽を欹てたといふ譯でもなく、流行の新人を送り出した譯ではなかつたが、それの持つてゐた潛勢力は當時人も知り私達も自信してゐた。
— 梶井基次郎 『『青空』のことなど』 青空文庫
」 一同耳を欹てた。
— DAS FAMILIENFEST 『祭日』 青空文庫
勿論此れとても句の裏面には殘燈の下に枕を欹てゝ居る作者の居室の光景の潜在像は現在して居て、それがなければ此等の句は全然無意味な譫語に過ぎないのであらう。
— 寺田寅彦 『天文と俳句』 青空文庫