蝉脱
せんだつ
名詞
標準
文例 · 用例
一九〇九年型の女優が一九三四年式のぴちぴちした近代娘に蝉脱した瞬間のスリルがおそらくこの作者の一番の狙いどころではないかと思われる。
— 寺田寅彦 『映画雑感(5)』 青空文庫
初めは何人と雖も甘いものを好み、漸く成長するに及んでは、砂糖の多い物即ち美味なりとするが如き幼穉の境を蝉脱して、甘味即美味の妄なるを不知不識の間に会得し、また幼穉の時代に於て嫌がった多くの物に於て嘆美すべき真味の佳なるものの存することを認めるに至るであろう。
— 幸田露伴 『貧富幸不幸』 青空文庫
思想じゃ人生の意義は解らんという結論までにゃ疾くに達しているくせに、まだまだ思想に未練を残して、やはり其から蝉脱することが出来ずに居るのが今の有様だ。
— 二葉亭四迷 『私は懐疑派だ』 青空文庫
詩が内容の上にも形式の上にも長い間の因襲を蝉脱して自由を求め、用語を現代日常の言葉から選ぼうとした新らしい努力に対しても、無論私は反対すべき何の理由も有たなかつた。
— 石川啄木 『弓町より』 青空文庫
詩が内容の上にも形式の上にも長い間の因襲を蝉脱して自由を求め、用語を現代日常の言葉から選ぼうとした新らしい努力に対しても、むろん私は反対すべき何の理由ももたなかった。
— 石川啄木 『弓町より』 青空文庫
日本ハ凡テニ於テ惡模倣ヨリ蝉脱シテ其ノ本ニ返ラザルベカラズ。
— 北一輝 『日本改造法案大綱』 青空文庫
どのような訓練の賜物か日本人にはこの柔軟性が伝統の中に残っていて、さて危機だと見ると蝉脱するがごとく翻然と転質する気力がある。
— 横光利一 『北京と巴里(覚書)』 青空文庫
しかしながら、専制的支配を必要とする傭兵であったため、十八世紀中には遂にこの横隊戦術から蝉脱する事が出来なかった。
— 石原莞爾 『戦争史大観』 青空文庫