竜涎
りゅうぜん
名詞
標準
文例 · 用例
が希くば、竜涎、蘆薈、留奇の名香。
— 泉鏡花 『河伯令嬢』 青空文庫
悟空が打ち眺めた王の手のあたりには、密香竜涎の香りが、晩春の紫の霞の如くふわりと包んで、薄紅に染つた爪の先で静かに咽んでゐた――あはれな悟空の想像では、この美しい手を透して王の美しさを想ふことは到底望まれぬことだつた。
— 牧野信一 『闘戦勝仏』 青空文庫
上衣の裾は軽く廊下の大理石の上を曳いて、跡には麝香と竜涎香との匂を残した。
— BALTHASAR ALDRAMIN. KURZE LEBENSGESCHICHTE AUS DEM ALTEN VENEDIG. 『復讐』 青空文庫
私は、マントンで、巴里風の洒落た服装と、竜涎香のにおいとを私の車室へ運び入れて、それから私も、彼とだけずっと饒舌りこんで来た、若いルセアニアの商人が、私を、自分の前の空椅子へ招待するのに任せた。
— 長靴の春 『踊る地平線』 青空文庫
あるのは、ただ、ルセアニア人が残して行った微かな竜涎香の薫りと、一晩中密閉されていた彼女の体臭とが混合して、喫煙室のそれのように、重く揺らいでいる空気だけだった。
— 長靴の春 『踊る地平線』 青空文庫
かすかに竜涎香が匂つた。
— 神西清 『夜の鳥』 青空文庫
これは洗面と含嗽の水なのですが、そのとき部屋の隅にある香炉に竜涎香を投げいれる。
— 久生十蘭 『ハムレット』 青空文庫
……なおこの書持参の者は、かの少量の麝香と竜涎香について、余らの間に決定を見たる買取り値だんを御報告申し上ぐるはずに候。
— ELIZABETH AND ESSEX 『エリザベスとエセックス』 青空文庫