秘蔵子
ひぞっこ
名詞
標準
文例 · 用例
ちょうどこの時代――この篇、連載の新聞の挿絵受持で一座の清方さんは、下町育ちの意気なお母さんの袖の裡に、博多の帯の端然とした、襟の綺麗な、眉の明るい、秘蔵子の健ちゃんであったと思う。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
現に拙者が貴所の希望に就き先生を訪うた日などは、先生の梅子|嬢を罵る大声が門の外まで聞えた位で、拙者は機会悪しと見、直に引返えしたが、倉蔵の話に依ればその頃先生はあの秘蔵子なるあの温順なる梅子|嬢をすら頭ごなしに叱飛していたとのことである、以て先生の様子を想像したまわば貴所も意外の感あることと思う。
— 国木田独歩 『富岡先生』 青空文庫
じょさいのない中老店員の一人は、顧客の老軍人の秘蔵子らしいお坊っちゃんの自分の前に、当時としてはめったに見られない舶来の珍しいおもちゃを並べて見せた。
— 寺田寅彦 『銀座アルプス』 青空文庫
御秘蔵子の東宮のお帰りになったのちの院の御心は最もお悲しかった。
— 榊 『源氏物語』 青空文庫
こんなことを少し物を識った女である夫人は見苦しがって、冷淡に見ていることで守は腹をたてて、俺の秘蔵子をほかの娘ほどに愛さないとよく恨んだ。
— 東屋 『源氏物語』 青空文庫
途上、道のりを訊ねたり、此地方の事情を教へてくれた娘さんはいゝ女性だつた、禅宗――しかも曹洞宗――の寺の秘蔵子と知つて、一層うれしかつた、彼女にまことの愛人あれ。
— 種田山頭火 『行乞記』 青空文庫
女の子はわたしの味方でしたが、長男は母に似てその秘蔵子でしたから、わたしはしょっちゅうこの子を憎らしく感じたものです。
— KREITSEROVA SONATA 『クロイツェル・ソナタ』 青空文庫
その位だから、我身の未来なんぞと云うことも、秘蔵子が考えないと同じように考えないでいる。
— ダウィット Jacob Julius David 『世界漫遊』 青空文庫