深まり
ふかまり
名詞
標準
文例 · 用例
空は紺碧に深まり、山は紫緑に黒ずんでいる。
— 九鬼周造 『祇園の枝垂桜』 青空文庫
あらゆるレビューのうちで何遍繰返し繰返し観ても飽きない、観ればみる程に美しさ面白さの深まり行くものは、こうした自然界のレビューである。
— 寺田寅彦 『マーカス・ショーとレビュー式教育』 青空文庫
所謂刳磔の苦勞をして、一作、一作を書き終へるごとに、世評はともあれ、彼の屈辱の傷はいよいよ激烈にうづき、痛み、彼の心の滿たされぬ空洞が、いよいよひろがり、深まり、さうして死んだのである。
— 太宰治 『逆行』 青空文庫
所謂刳磔の苦労をして、一作、一作を書き終えるごとに、世評はともあれ、彼の屈辱の傷はいよいよ激烈にうずき、痛み、彼の心の満たされぬ空洞が、いよいよひろがり、深まり、そうして死んだのである。
— 太宰治 『逆行』 青空文庫
時刻は夜に入り闇の深まりも増したかに感ぜられる。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
その夜新吉の膝に加えられたカテリイヌの柔い重圧が新吉のメランコリーに深く泌み込んで仕舞ったのを新吉はいまいましく思いながら、まぼろしのようにその夜教授の部屋の窓から眺めた月光を含む靄の中からサンミッシェル街の灯影を思い泛べて、秋の深まり行く巴里の巷を幸福と懊悩に乱れ乍らさまよい歩いた。
— 岡本かの子 『巴里祭』 青空文庫
上見ぬ鷲の翔らん天ぎわから地上へかけて雲の帳は相変らずかけ垂れていたが、深まり来るたそがれの色にあらがうように帳の色は明るく薄れ行きつつある。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
物の影を黒めれば黒めるほど、その物の存在がいよ/\くっきり浮き出されて来るように、死の深まりを知らないで生の歓びの高さは突き止められない。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫