鳩羽
はとば
名詞
標準
文例 · 用例
宮は鳩羽鼠の頭巾を被りて、濃浅黄地に白く中形模様ある毛織のシォールを絡ひ、学生は焦茶の外套を着たるが、身を窄めて吹来る凩を遣過しつつ、遅れし宮の辿着くを待ちて言出せり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
鳩羽いろをした果しない蒼空が、エロチックな穹窿となつて大地の上に身をかがめ、眼に見えぬ腕に佳人を抱きしめながら、うつつをぬかしてまどろむかとも思はれる、静けさと酷熱の中に燃える日盛りの、この堪へがたい暑さ!
— VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI 『ディカーニカ近郷夜話 前篇』 青空文庫
雲のやうな煙が忽ち彼の頭のうへにひろがつて、鳩羽いろの靄が彼をつつんでしまつた。
— VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI 『ディカーニカ近郷夜話 前篇』 青空文庫
四辺が次第に鳩羽色となり、街燈がキラキラ新しい金色で瞬き出すと、どんな人の顔にも、何か他の時と異った一つの表情が現われた。
— 宮本百合子 『粗末な花束』 青空文庫
毎晩九時過ぎると、まだ夜と昼との影を投じ合った鳩羽色の湖面を滑って、或時は有頂天な、或時は優婉な舞踏曲が、漣の畳句を伴れて聞え始めます。
— 宮本百合子 『C先生への手紙』 青空文庫
西空に鳩羽色の雲があるばかりで灰色っぽい水色にくれかかる空の光の下で大きい梧桐の上向きの枝々は、芽の出る前の春の□木の上向きの枝々はあかるいときより一層上へのびて見えた。
— 一九四七年(昭和二十二年) 『日記』 青空文庫
山茶花の花、 散紅葉、 光った卵色と鳩羽色の夕映。
— 一九二五年(大正十四年) 『日記』 青空文庫
行手の、鳩羽色に暮れかかった樹林の上に、新しい宵の明星が瞬き出した。
— 宮本百合子 『古き小画』 青空文庫