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鴨東

おうとう
名詞
1
標準
文例 · 用例
昨日ね、僕が湯から上がって、椽側で肌を抜いで涼んでいると――聴きたいだろう――僕が何気なく鴨東の景色を見廻わして、ああ好い心持ちだとふと眼を落して隣家を見下すと、あの娘が障子を半分開けて、開けた障子に靠たれかかって庭を見ていたのさ」「別嬪かね」「ああ別嬪だよ。
夏目漱石 虞美人草 青空文庫
それは円山の夜桜や都踊やらで、都の人々の心を鴨東の一角にそゝり集めて居た或る暖かい宵であつた。
加能作次郎 世の中へ 青空文庫
この歌などもその最も成功したものの一つで、説明する迄もなく、昔の鴨東辺の情景が絵のやうにはつきり現はれてゐる。
平野萬里 晶子鑑賞 青空文庫
億万円にも代えられぬ東山の胴をくりぬいて琵琶湖の水を引張って見たり、鴨東一帯を煙と響と臭に汚してしまったり、狭い町内に殺人電車をがたつかせたり、嵐山へ殺風景を持込んだり、高尾の山の中まで水力電気でかき廻わしたり、努力、実益、富国、なんかの名の下に、物質的|偏狂人の所為を平気にして居る。
徳冨健次郎 みみずのたはこと 青空文庫
而シテ鴨東脂粉ノ光彩目ヲ奪ヒ嬋娟觀ル可キ者亦嵐光峰影ノ奇能ク之ガ助ヲ爲ス者ニ非ズ邪。
一名京都紀行 十年振 青空文庫
鴨西、鴨東の蘭燈の影、嵯峨嵐山の晩春の行楽、宇治川堤の桜若葉等、京洛附近にも思ひ出の種は数々あるが、分けても大阪は現在の私に縁故が深くなつたせゐか道頓堀川の水を見ても転た懐旧の情に堪へない。
谷崎潤一郎 青春物語 青空文庫