陰暗
いんあん
名詞
標準
文例 · 用例
夜、み空はたかく、吹く風はこまやかに ――祈るよりほか、わたくしに、すべはなかつた……寒い夜の自我像きらびやかでもないけれどこの一本の手綱をはなさずこの陰暗の地域を過ぎる!
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
流れの淀むところは陰暗く、岩を回れば光景瞬間に変じ、河幅急に広まりぬ。
— 国木田独歩 『わかれ』 青空文庫
それから青芒の線を延して、左へ離れた一方に、一叢立の藪があって、夏中日も当てまい陰暗く、涼しさは緑の風を雲の峰のごとく、さと揺出し、揺出す。
— 泉鏡花 『沼夫人』 青空文庫
北方の陰暗、深刻、そうした私の芸術に欠けているものをこそ求めて、私はこの北方に来ることを楽しみにしていた。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
さて散策して見た中津の町は電飾が鮮かではあったが、いかにも北国の小都市らしく、簡素で、また陰暗たるところがあった。
— 北原白秋 『木曾川』 青空文庫
案の状杉江は、六十年前の心中話しに遡って行って、その時陰暗の中でお筆が勤めていた、或る一つの驚くべき役割を暴露したのであった。
— 小栗虫太郎 『絶景万国博覧会』 青空文庫
何か陰暗のうちに、思いも付かない黙闘が行われているのではないか――そう考えると、はやそれから、秘密っぽい匂が感じられて来て、是非にも、最奥のものを覗き込みたいような、ときめきを覚えるのだった。
— 小栗虫太郎 『オフェリヤ殺し』 青空文庫
若し又暇をえて狐森の煉瓦塀内に客とならば、その陰暗たる方三尺の監房にも心雲悠々たる閑天地を発見するに難からじ。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫