屋根庇
やねひさし
名詞
標準
文例 · 用例
もう二ヵ月以上滞留している私共には、下の二階が屋根庇の反射がないために自分達の部屋よりも涼しいということも、同時に少し光線が不充分だということをも知っている。
— 宮本百合子 『一つの出来事』 青空文庫
――出窓の前の青桐を透して屋根庇の陰に、下座敷の寂そりした障子の腰だけが見えた。
— 犬養健 『朧夜』 青空文庫
最後の光芒が、すすけた屋根ひさしをけばけばしく隈取っていた。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫
風の荒かった冬のあいだに北側の屋根ひさしは落ちかかり、壁の穴に零余子の蔓はこぞのままの枯れ葉をつけて、莢豆の莢のように干からびて鳴っていた。
— 室生犀星 『荻吹く歌』 青空文庫
時に絲川老人の宿つた夜は恰も樹木挫折れ、屋根廂の摧飛ばむとする大風雨であつた、宿の主とても老夫婦で、客とゝもに搖れ撓む柱を抱き、僅に板形の殘つた天井下の三疊ばかりに立籠つた、と聞くさへ、……わけて熊野の僻村らしい……其の佗しさが思遣られる。
— 泉鏡花 『遺稿』 青空文庫
屋根廂からななめさがりに、ぴゅッと一本の朱槍が走って、逃げだしていく佐分利の背から胸板をつらぬいて、あわれや笑止、かれを串刺しにしたまま、欅の幹に縫いつけてしまった。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫
すっくとそこに立って、槍の石突きを勢いよくトンと大地につくやいなや、「やッ――」 と叫んで、みごとに一階の屋根廂へ飛びあがった。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫