炉中
ろちゅう
名詞
標準
文例 · 用例
それを熔鉱炉の手前の縁にして、その向うに炉中の火気と見えるほど都の空は燃えています。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
惜福は敢えてすべきである、しかも福を惜しむというのは炉中の炭火を妄に露出させないようなものであって、たとえこれを惜しむことに徹底しても、新に炭を加えることが無ければ、その火勢火力は増殖することがない。
— 幸田露伴 『努力論(現代訳)』 青空文庫
太上老君の八卦炉中に焼殺されかかったときも、銀角大王の泰山圧頂の法に遭うて、泰山・須弥山・峨眉山の三山の下に圧し潰されそうになったときも、彼はけっして自己の生命のために悲鳴を上げはしなかった。
— ―沙門悟浄の手記― 『悟浄歎異』 青空文庫
既にして人々はカミン炉の上に多量の煤あるを見て、試に炉中を検せしに、人の想像にも及ばざる程の残酷なる事実を発見せり。
— THE MURDERS IN THE RUE MORGUE 『病院横町の殺人犯』 青空文庫
東京の或る固執派教会に属する女学校の教師が曾我物語の挿画に男女の図あるを見て猥褻文書なりと飛んだ感違ひして炉中に投込みしといふ一ツ咄も近頃笑止の限りなれど、如何考へても聖書よりは小説の方が面白いには違ひなく、教師の眼を窃んでは「よくッてよ」派小説に現を抜かすは此頃の女生徒気質なり。
— 三文字屋金平 『為文学者経』 青空文庫
炉中の火は、木の根が赤々と燃えて、煙は極めて少なく、火力が強いから、煙の立たない石炭を焚いているようで、一方には大鉄瓶がチンチンと湯気を吐いている。
— 勿来の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
なおまた炉中には、蕎麦餅らしいのが幾つも、地焼きにころがしてある。
— 勿来の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
かくて、例の白昼の炉辺へ来て見ても、天井の低い、板目も古びた一室ではあるが、陰惨とか、瘴毒とかいうような気分は無く、炉中の火が明るく燃えているのが、多少の肌寒い身に快感を与えるほどのものです。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫