断雲
だんうん
名詞
標準
文例 · 用例
一番面白いのは、三艘の大飛行船が船首を並べて断雲の間を飛行している、その上空に追い迫った一隊の爆撃機が急速なダイヴィングで礫のごとく落下して来て、飛行船の横腹と横腹との間の狭い空間を電光のごとくかすめては滝壷の燕のごとく舞上がる光景である。
— 寺田寅彦 『烏瓜の花と蛾』 青空文庫
空には断雲の飛ぶ事矢のごとく、船は今想像もできぬほどの速力をもって、狂風に吹かれ怒濤を浴びつつ走りいるなり、されど余の驚きしはその事にあらず、見よ!
— 押川春浪 『南極の怪事』 青空文庫
断雲の絶間より、幽霊火のごとき星の照らす甲板上には、今しも一団の黒影入り乱れて闘いおるなり、人数およそ二十人ばかり、我が帆船の水夫のみにはあらず、オオ、これ何事ぞ!
— 押川春浪 『南極の怪事』 青空文庫
いちばんおもしろいのは、三|艘の大飛行船が船首を並べて断雲の間を飛行している、その上空に追い迫った一隊の爆撃機が急速なダイヴィングで小石のごとく落下して来て、飛行船の横腹と横腹との間の狭い空間を電光のごとくかすめては滝壺のつばめのごとく舞い上がる光景である。
— 寺田寅彦 『からすうりの花と蛾』 青空文庫
月夜見の神の力の測りなくて、断雲一片の翳だもない、蒼空一面にてりわたる清光素色、唯|亭々皎々として雫も滴たるばかり。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
そしてその瀞が、断雲ただよう絶壁下を百マイルも続いている。
— 天母峰 『人外魔境』 青空文庫
その夜、断雲からもれる月が雪のうえに輝いていた。
— 天母峰 『人外魔境』 青空文庫
直ちに西北に向ひて、今尚茫々たる古の那須野原に入れば、天は濶く、地は遐に、唯平蕪の迷ひ、断雲の飛ぶのみにして、三里の坦途、一帯の重巒、塩原は其処ぞと見えて、行くほどに跡は窮らず、漸く千本松を過ぎ、進みて関谷村に到れば、人家の尽る処に淙々の響有りて、これに架れるを入勝橋と為す。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫