苗売り
なえうり
名詞
標準
文例 · 用例
つい二三年前までは毎年初夏になるとあの感傷的な苗売りの声を聞いたような気がする。
— 寺田寅彦 『物売りの声』 青空文庫
銀子に兜町の若い旦那の客がついたのは、土の見えないこの辺にも、咽喉自慢の苗売りの呼び声が聞こえる時分で、かねがねお神の民子から話があったと見え、贔屓に呼んでくれる藤川という出先のお神の見立てで、つけてくれたのであった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
表には苗売りの声がきこえた。
— 二人女房 『半七捕物帳』 青空文庫
はるか妻恋坂の下からのどかな余韻を引いてあがってくる、苗売りの呼び声……。
— 日光の巻 『丹下左膳』 青空文庫
やがて青葉若葉の初夏――それも今は、町の各所に打水がにおって、もう苗売りではない、金魚売り、すだれ売りだ。
— 新版大岡政談 『魔像』 青空文庫
苗売りの声が舟松町を湊町の方へ近付いてくるのを、勘次は聞くともなしに放心聞いていた。
— 梅雨に咲く花 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
苗売り、金魚売り、虫売りの声々、カタンカタンという定斎屋の音、腹を見せて飛ぶ若い燕の、健康そうな啼き声などにも、万物生々たるこの季節の、清々しい呼吸が感ぜられた。
— 国枝史郎 『名人地獄』 青空文庫
苗売り「朝ァ顔の苗夕顔の苗。
— 柴田流星 『残されたる江戸』 青空文庫