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獣慾

じゅうよく
名詞
1
標準
文例 · 用例
腹が張って、酒の気が廻って、当分の間ほかの慾がなくなった乞食は、女を見るや否や急に獣慾を遂行する。
夏目漱石 文芸の哲学的基礎 青空文庫
自分は、冷かされながら、眼を上げて、黒い塊を見るたびに、人数やら、着物やら、獰猛の度合やらをだんだん腹に畳み込んでいたが、最初は総体の顔が総体に骨と眼でできた上に獣慾の脂が浮いているところばかり眼に着いて、どれも、これも差別がないように思われた。
夏目漱石 坑夫 青空文庫
だが私は、その時、このまゝむざむざと私達のケテイをあのやうな奴輩の獣慾の犠牲にされてはアポロの門前で割腹をしなければならなかつたから、必死の勇気を揮つて、いきなり足許の蛇籠の目からこぼれ出てゐる拳骨大の石を拾ひあげるや、奴の臀部を目がけて、えいツ!
牧野信一 三田に来て 青空文庫
コレリツヂが「ロメオ・ヱンド・ジユリヱツト」を評する中に、ロメオの恋愛を以て彼自身の意匠を恋愛せし者となし、第一の愛婦なる「ロザリン」は自身の意匠の仮物なりと論ぜるは、蓋し多くの、愛情を獣慾視して実性を見究めざる作家を誡しむるに足る可し。
北村透谷 厭世詩家と女性 青空文庫
写実とは云へども、世の所謂実際派の為すごとく、人間の獣慾を惟一の目的として描出するの謂にあらず、人間に不完全の認識あるよりして、何物かを得て之を贖はんとの慾望は天地間自然の理なれば、此慾望の一転して他の美妙なる位地に思慕を生ずる実情を描写するを、詩人の本領とは云ふなり。
北村透谷 「歌念仏」を読みて 青空文庫
聖愛と言ひ得ると共に獣慾とも言はれ得る。
田山録弥 西鶴小論 青空文庫
自然は聖愛にして置かなければならない時には聖愛にし、獣慾にして置かなければならない時には獣慾にして置くのである。
田山録弥 西鶴小論 青空文庫
単に獣慾と片附けて了つた人も矢張同じだ。
田山録弥 西鶴小論 青空文庫