汐
しお
名詞
標準
文例 · 用例
渝らぬ契りの誰れなれや千年の松風颯々として血汐は殘らぬ草葉の緑と枯れわたる霜の色かなしく照らし出だす月一片何の恨みや吊ふらん此處鴛鴦の塚の上に。
— 樋口一葉 『別れ霜』 青空文庫
ながれるごとき涙にぬれ私はくちびるに血汐をぬる。
— 萩原朔太郎 『定本青猫』 青空文庫
然して汐風が吹き荒れているが為に。
— 太宰治 『パンドラの匣』 青空文庫
(昭和五年八月『東京朝日新聞』) 四 験潮旅行 明治三十七年の夏休みに陸中|釜石附近の港湾の潮汐を調べに行ったときの話である。
— 寺田寅彦 『夏』 青空文庫
重力分布や垂直線偏差から推測さるるイソスタシーの状態、地殻|潮汐や地震伝播の状況から推定さるる弾性分布などがわずかにやや信ずべき条項を与えているに過ぎない。
— 寺田寅彦 『地震雑感』 青空文庫
勝負事を否定する(第百十一段)かと思うと、双六の上手の言葉を引いて(第百十段)修身治国の道を説いたり、ばくち打の秘訣(第百二十六段)を引いて物事には機会と汐時を見るべきを教えている。
— 寺田寅彦 『徒然草の鑑賞』 青空文庫
胸の血汐の通うのが、波打って、風に戦いで見ゆるばかり、撓まぬ膚の未開紅、この意気なれば二十六でも、紅の色は褪せぬ。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
寝返りを打てば、袖の煽にふっと払われて、やがて次の間と隔ての、襖の際に籠った気勢、原の花片に香が戻って、匂は一処に集ったか、薫が一汐高くなった。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫