楽境
らくきょう
名詞
標準
文例 · 用例
家庭愛極楽、家庭というものが認められて来て、そこを中心に安楽境を作ろうとする傾向が多くなって来ました。
— 岡本かの子 『仏教人生読本』 青空文庫
一棟は幾戸かに分れ、戸々皆な障子をとざし、其障子には火影|花かに映り、三絃の乱れて狂ふ調子放歌の激して叫ぶ声、笑ふ声は雑然として起つて居るのである、牛部屋に等しき此長屋は何ぞ知らん鉱夫どもが深山幽谷の一隅に求め得し歓楽境ならんとは。
— 國木田独歩 『空知川の岸辺』 青空文庫
累々とした被服廠の死屍、まるであの惨憺たる写真のとおりだが、これはまさしく現実に活動し、匍匐し、生殖し、吼哮する海獣の、修羅場の、歓楽境の、本能次第の、無智の、また自然法爾の大群集である。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
が、とにかく、三万頭の膃肭獣により成る数千百のハーレムにおける割拠、争奪、保護、飛血、生殖、哺乳の大歓楽境|大修羅場を現出する。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
今後は酔後断じて、敬治君や樹明君といつしよに街へ出ないことを決心する、そして私一人に関する限りに於て、料理屋やカフヱーや、さういふ享楽境、遊蕩場所へ立ち寄らないことを誓約する、それぐらゐの覚悟を持つてゐなければ、とうてい真実の生活は出来ない、随つて真実の句も生れない。
— 種田山頭火 『其中日記』 青空文庫
実に手軽い歓楽境である。
— 夢野久作 『東京人の堕落時代』 青空文庫
死する時楽境にあるが如く、濁水も亦た甘露を味ふに似たり、万事斯くして了れば、残るものははしたなき世の浮名のみ。
— 北村透谷 『「桂川」(吊歌)を評して情死に及ぶ』 青空文庫
けれど電車に乗ったということだけで心が落ちついて、これからが――家に帰るまでが、自分の極楽境のように、気がゆったりとなる。
— 田山花袋 『少女病』 青空文庫