有りの侭
ありのまま
名詞
標準
文例 · 用例
その結果は親子共に菰の上に寝ることになろうと土の上に転ぶことになろうと、親として欲する有りの儘な声で喚び交してみたかったのである。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
歌は、「心の種」に初心の人の歌だと云つて、ふじの山おなじ姿に見ゆるかな かなたおもてもこなたおもてもとか云ふのがあつて、奈何に有りの儘が好いと云つても、これでは歌にならないと云つてあつた。
— 森鴎外 『俳句と云ふもの』 青空文庫
美智子達は此間中から一切私と口をきゝませんでした、加けに私は、そんな有りの儘のくだらない事を書いて外聞が悪い、第一小説なら小説らしくちやんとしたものを書いたらよからうに、と母達から大変に叱られたのでした。
— 牧野信一 『青白き公園』 青空文庫
」私は、具合が悪かつたが有りの儘を云ふより他はなかつた。
— 牧野信一 『妄想患者』 青空文庫
真実の事実を有りの儘に申す事、もっとむずかしく申せば真実と信じた事をはっきりと申すことが、此の世の中でどんなに恐ろしい結果を招くかという事をあの男は存じませんでした。
— 浜尾四郎 『殺された天一坊』 青空文庫
然し単に一法律家に過ぎぬ私が、憖じ変な小説を書けば世の嗤いを招くにすぎないでしょうから、私は今、あなた方の前に事件を有りの儘にお話して見ましょう。
— 浜尾四郎 『彼が殺したか』 青空文庫
鉄風 (苦しい咳払い)このことは……全然問題を含まないというわけじゃァないが……事実を有りの儘に言うとそのとおりなんだ。
— 森本薫 『華々しき一族』 青空文庫
私達の目まぐるしい生活が、あらゆる感情の綯い交じったその日その日が、有りの儘に私達の在る限り、胸の中にたたまれてあるとしたら、それを負うて歩まねばならぬ人の運命はいかに悲惨なものだろうか。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫