蒼
あお
名詞
標準
文例 · 用例
旦那さまだとて金滿家の息子株が藝人たちに煽動られて、無我夢中に浮かれ立つとは事が違ふて心底おもしろく遊んだのではありますまい、いはゞ疳癪抑へ、憂さ晴らしといふやうな譯で、御酒をめし上つたからとて快くお醉ひになるのではなく、いつも蒼ざめた顏を遊ばして、何時も額際に青い筋が顯はれて居りました。
— 樋口一葉 『この子』 青空文庫
広義の擬古主義が蒼古的様式の古拙性を尊ぶ理由もそこにある。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
蒼く霞んだ春の空と緑のしたたるような東山とを背負って名桜は小高いところに静かに落ちついて壮麗な姿を見せている。
— 九鬼周造 『祇園の枝垂桜』 青空文庫
意志と無明觀念もしくは心像の世界に就いてだまつて道ばたの草を食つてるみじめな 因果の 宿命の 蒼ざめた馬の影です。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
蒼ざめた馬冬の曇天の 凍りついた天氣の下でそんなに憂鬱な自然の中でだまつて道ばたの草を食つてるみじめな しよんぼりした 宿命の 因果の 蒼ざめた馬の影ですわたしは影の方へうごいて行き馬の影はわたしを眺めてゐるやうす。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
因果の 宿命の 定法の みじめなる絶望の凍りついた風景の乾板から蒼ざめた影を逃走しろ。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
思想は一つの意匠であるか鬱蒼としげつた森林の樹木のかげでひとつの思想を歩ませながら佛は蒼明の自然を感じたどんな瞑想をもいきいきとさせどんな涅槃にも溶け入るやうなそんな美しい月夜をみた。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
花やかなる情緒深夜のしづかな野道のほとりでさびしい電燈が光つてゐるさびしい風が吹きながれるこのあたりの山には樹木が多く楢、檜、山毛欅、樫、欅の類枝葉もしげく鬱蒼とこもつてゐる。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫