庇間
ひあわい
名詞
標準
文例 · 用例
湯は、だだっ広い、薄暗い台所の板敷を抜けて、土間へ出て、庇間を一跨ぎ、据風呂をこの空地から焚くので、雨の降る日は難儀そうな。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
小灯の朦々と包まれた湯気の中から、突然褌のなりで、下駄がけで出ると、颯と風の通る庇間に月が見えた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
蒸々と悪気の籠った暑さは、そこらの田舎屋を圧するようで、空気は大磐石に化したるごとく、嬰児の泣音も沈み、鶏の羽さえ羽叩くに懶げで、庇間にかけた階子に留まって、熟と中空を仰ぐのさえ物ありそうな。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
こゝの家も店さきを一間二尺ほど切り下げられるんださうで、両隣との庇間へ杭を打たれたんです。
— 岡本綺堂 『赤い杭』 青空文庫
繁華な心斎橋筋を東か西へ這入ったあたりの、わりに静かな街通りを行くと、家並が一軒欠けていて、その庇間のような所にそういう路次の入口があり、時にはその入口にちょっとした潜り門のようなものが附いていて、奥の長屋に住んでいる人々の表札が並べて掲げてあることもある。
— 「怪談牡丹燈籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について 『我が圓朝研究』 青空文庫
夜になつて風向が變ると、土藏と土藏の庇間を吹き拔ける風が、この凧の唸りに當つてブーンと鳴る。
— 凧の詭計 『錢形平次捕物控』 青空文庫
丁度|道了権現の向い側の、ぎっしり並んだ家と家との庇間を分けて、殆ど眼につかないような、細い、ささやかな小路のあるのを見つけ出した時、私は直覚的に女の家がその奥に潜んで居ることを知った。
— 谷崎潤一郎 『秘密』 青空文庫
明智はその石垣を攀昇って、板塀と土蔵との庇間の薄暗い中へ入って行った。
— 江戸川乱歩 『一寸法師』 青空文庫