指顧
しこ
名詞
標準
文例 · 用例
方略の第二段に襲撃を加へることにしてある大阪富豪の家々は、北船場に簇がつてゐるので、もう悉く指顧の間にある。
— 森鴎外 『大塩平八郎』 青空文庫
一面は海、三面は山、常磐の山海、指顧の中に在り。
— 大町桂月 『常磐の山水』 青空文庫
白河城址も指顧の間にあり。
— 大町桂月 『白河の七日』 青空文庫
此意味において、古代日本民族の中心となつてゐた邑落に対して、海部或は山人の住みかと言ふものが、多くは指顧する事の出来る様な近い距離に、構へられる様にもなつた。
— ――序説として―― 『唱導文学』 青空文庫
そして、それにはストックホルムは有難いというわけは、ジュルガルデン市街島の丘にスカンセンなる公園兼|屋外博物館があって、そこにべらぼうに高いブレダブリクの塔――二四六|呎――が立っているから、その頂上へ登るとストックホルムとその近郊は指顧のうちだ。
— 白夜幻想曲 『踊る地平線』 青空文庫
涼風の通う地中海に、マストに近くクリートの残雪を指さし、乱積雲を想わせるエトナの噴煙を左舷に望めば、リパリ、ストロムボリと、指顧に暇ない船はガルフ・ドゥ・リヨンの平な水をわたって、地平線上には霞のようにアルプ・マルティムが現われて来る。
— 辻村伊助 『続スウィス日記(千九百二十三年稿)』 青空文庫
早朝わが船海峡に入り、左右に林巒の鬱然たるを指顧して過ぐ。
— 井上円了 『南半球五万哩』 青空文庫
鳥島と裏浜とはあひ距ること僅に数町にすぎず、そのあひだ漣として指顧のあひだに聳ゆ――雲を被ぎて眠れるがごときもの漸く醒め来れば半面の微紅は万畳の波に映じ、朝霧のはれわたるままに、遠き海づらは水銀のごとく耀きて志摩半島の翠螺をのぞむ。
— 蒲原有明 『松浦あがた』 青空文庫