行き通う
ゆきかよう
動詞
標準
文例 · 用例
しかし、|かれ夢みぬ、されど、そを云う能わざりき――なんですよ」「では、その男は死人の室を、親しきものが行き通うがごとくに、戻っていったと仰言るのですね」とクリヴォフ夫人は、急に燥ぎ出したような陽気な調子になって、レナウの「|秋の心」を口にした。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
橙、注連、昆布、鰕などが行き通う人々の眼にあざやかに見える。
— 田山花袋 『田舎教師』 青空文庫
村の生活に注意しようとする者は、最初にまずこの昔の路の上を、人が右左に行き通うていた時代の姿というものを、胸に描いて見なければならない。
— 柳田国男 『年中行事覚書』 青空文庫
しかもおたがいにまったくそれを知らず、ただ偶然にわたしが母の歌を記憶していたのだけれども、気がついて見ると一国の文化は、わたしたちの知らぬまに国じゅうに行き通うていたのであった。
— 柳田国男 『母の手毬歌』 青空文庫
竜宮女房の普通の形は、今日の嫁入婚に近く、妻の親里に行き通うということはないのだが、この花売竜宮入りだけは婿入に始まっている。
— 柳田国男 『海上の道』 青空文庫
水陸のけじめは表辺のみで、下に行き通うものという観念を、我々は持っていたのかもしれない。
— 柳田国男 『海上の道』 青空文庫
南方諸島のニルヤカナヤに至っては、始めからテダの大神の豊栄昇る処であって、しかも選ばれたる魂の行き通う島であり、同時にまた昔話の常世郷でもあった。
— 柳田国男 『海上の道』 青空文庫
我々の根の国は海の東、朝ごとの日の御影が、花のごとく空を彩る水平線の外にあって、最初は生死の別もなく、人の魂の自由に行き通う島地であったのが、次第にこちらの人の居処が移って、しかも日の出る方角が動かなかったために、いつとなく幻しの楽土と化し去ったのではないか、というようなこともまず想像せられる。
— 柳田国男 『海上の道』 青空文庫