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落付き

おちつき
名詞
1
標準
文例 · 用例
彼の画面に対して、あんなにも透視的の奥行きをあたへたり、適度の明暗を反映させたり、よつて以てそれを空間から切りぬき、一つの落付きある完成の気分をそへる額縁に対して、どんな画家も無関心でゐることができないだらう。
萩原朔太郎 装幀の意義 青空文庫
普通の田舎町らしい――漁師町らしい――気分と、温泉町らしい特異の気分とが不調和に混同して、妙に落付きの悪い安価の印象をあたへる。
萩原朔太郎 石段上りの街 青空文庫
すでに七八|歳になっているので、ちょっと中年を過ぎた落付きを持っているので、その魅力は垢脱けがしていた。
岡本かの子 金魚撩乱 青空文庫
必ず来て総てが帳消しされる死、この退っ引ならないものへ落付きどころを置き、その上での生きてるうちが花という気持で、せいぜい好きなことに殉じて行ったなら、そこに出て来る表現に味とか芸術とかの岐れの議論は立つまい。
岡本かの子 食魔 青空文庫
戸主のことではあり、ともかく、骨は菩提寺の墓に埋めて欲しいという伯母の希望から運んで来たのであったが、鼈四郎は東京のその伯母の下町の家に落付き、埋葬も終えて、序にこの巨都も見物して京都に帰ろうとする一ヶ月あまりの間に、鼈四郎はもう伯母の擒となっていた。
岡本かの子 食魔 青空文庫
死をもって万事清算がつく絶対のものと思い定め、それを落付きどころとして、その無からこの生を顧り、須臾の生なにほどの事やあると軽く思い做されるこころから、また死を眺めやってこれも軽いものに思い取る。
岡本かの子 食魔 青空文庫
お涌も皆三にむかつてゐると、あれほど気嵩で散漫だと思ふ自分がしつとり落付き、こまかく心が行届いて、無我と思へるほど自分には何にも無くなり、ひたすら皆三の身の囲りの面倒を見てやり度くなるのであつた。
岡本かの子 蝙蝠 青空文庫
この二つの欲求の調和に応ずべく、仏教にもいろ/\の変貌を来たしたが、中にも、肉感的美欲を充足させつゝ、それを通して魂の永遠の落付きどころを覗かせるには、感覚的な対象となる宗教的器具設備が最も時機相応であつた。
岡本かの子 老主の一時期 青空文庫