雑民
ざつみん
名詞
標準
文例 · 用例
松塘が年二十八の時の偶作に「釣耕家世雑民編。
— 永井荷風 『下谷叢話』 青空文庫
」〔釣耕家世雑民ノ編/誤リテ詩書ヲ学ビ力田ヲ廃ス/辛苦窓間何ノ獲ル所ゾ/青灯我ヲ賺スコト十余年〕と言ってあるので、その家は代々農作と漁業とを営んだように思われるが、『安房志』と題した斎藤夏之助の著述を見るに、松塘の父道順は医を業としたと言ってある。
— 永井荷風 『下谷叢話』 青空文庫
そして検非違使をテコずらせたり、根のない風説を撒きちらしたり、公卿堂上を動揺させては――また当分、市や娼家の雑民街へ、泡つぶのように、消え込むのである。
— 吉川英治 『平の将門』 青空文庫
それと、眼をみはったのは、玄徳や張飛の顔を見知っている市の雑民たちで、「やあ、先に行く大将は、蓆売りの劉さんじゃないか」「そのそばに、馬にのって威張って行くのは、よく猪の肉を売りに出ていた呑んだくれの浪人者だぞ」「なるほど。
— 桃園の巻 『三国志』 青空文庫
日頃からだが、近畿一帯には宮方へ心を寄せる反幕府の郷士、神官、雑民どもが、野に充ちているといってよい。
— みなかみ帖 『私本太平記』 青空文庫
崇徳帝の朝廷と、鳥羽上皇の院政と、二つの政府の下に、まだ中流層といったような層はなく、貴族層と低い雑民層だけの二相社会があった。
— 吉川英治 『随筆 新平家』 青空文庫