生棲
せいせい
名詞
標準
文例 · 用例
海の魚介類は、漁師の漁る灯火の下に、群をなして集つて来るし、山野に生棲する昆虫類は、人家の灯火や弧灯に向つて、蛾群の羽ばたきを騒擾する。
— 萩原朔太郎 『月の詩情』 青空文庫
神と惡魔とは、いつも一の氣質の中に、或るふしぎな樣式で入り込みながら生棲してゐる。
— 萩原朔太郎 『非論理的性格の悲哀』 青空文庫
高原地方や山麓の焼土に多く生棲していて、特に夏の日中に飛翔する小虫を捉えた着眼点にある。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
あのビルヂングの林立する新宿の町々に、かうした多くの人物が生棲してゐることを考へ、都會の隅々に吹きめぐる秋風の蕭條といふ響を聞いた。
— 萩原朔太郎 『悲しい新宿』 青空文庫
「こんな美しいところで人間が一生棲んでいたら、非常に勉強したくなるか、博奕ばかりやりたくなるかもしれないな。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
いつも文学を文壇の習慣と結びつけなければ生棲出来ぬ因循さが、自然主義以来牢固として脱けず、テーマがあってもモチーヴがなければ仕事は出来ぬという完成にまで達するに到った。
— 横光利一 『スフィンクス(覚書)』 青空文庫
河童が幻想の生棲物だからというのではなく、それを扱う作者火野の態度の本質は、芥川よりも文学のこととして不健全な低下を示していると云えるのである。
— ――火野葦平のことなど―― 『日本の河童』 青空文庫
他人にわからない文壇生棲間のもつれでもあってのことだろうが、この全く非文学的なセンセーションは作者が希望するしないにかかわらず「絶壁」を問題作とする一助となり、モデルであると名のり出た人々を脚燈の前に立たせた。
— 宮本百合子 『五〇年代の文学とそこにある問題』 青空文庫