浮紋
うきもん
名詞
標準
文例 · 用例
――一年、比野大納言、まだお年若で、京都|御名代として、日光の社参に下られたを饗応して、帰洛を品川へ送るのに、資治卿の装束が、藤色なる水干の裾を曳き、群鵆を白く染出だせる浮紋で、風折烏帽子に紫の懸緒を着けたに負けない気で、此大島守は、紺染の鎧直垂の下に、白き菊綴なして、上には紫の陣羽織。
— 泉鏡花 『妖魔の辻占』 青空文庫
ルーム・ランプに照らされて一方の隅に浮紋レースの肩掛をした瑛子が、背中にクッションを当てがって目を瞑っている。
— 宮本百合子 『海流』 青空文庫
丁度その夜はやはり月のない、まつ暗な晩でございましたが、大殿油の灯影で眺めますと、縁に近く座を御占めになつた大殿様は、浅黄の直衣に濃い紫の浮紋の指貫を御召しになつて、白地の錦の縁をとつた円座に、高々とあぐらを組んでいらつしやいました。
— 芥川龍之介 『地獄変』 青空文庫
丁度その夜はやはり月のない、まつ暗な晩でございましたが、大殿油の灯影で眺めますと、縁に近く座を御占めになつた大殿樣は、淺黄の直衣に濃い紫の浮紋の指貫を御召しになつて、白地の錦の縁をとつた圓座に、高々とあぐらを組んでいらつしやいました。
— 芥川龍之介 『地獄變』 青空文庫
見ると額の上から大粒の汗がころげ落ち、左右の肩骨が近頃めっきり高くなって、背中にピタリとついている夾襖の上に、八字の皺が浮紋のように飛び出していた。
— 魯迅 『薬』 青空文庫
摸樣は種類甚多しと雖も大別して沈紋浮紋の二とするを得、沈紋とは土器の面より凹みて付きたる摸樣にして、浮紋とは土器の面上に他の土塊を添へて作りたるものの謂なり。
— 坪井正五郎 『コロボックル風俗考』 青空文庫