櫚
櫚
名詞
標準
文例 · 用例
船体を白く塗つてゐないから、白鳥とは見えないが、又鰭を振る魚とも見えない、船の長さ七間半、幅四尺、深さ三尺ぐらゐで、両方の舷側には、小さな穴を明け、棕櫚繩で、長さ九尺ぐらゐもあらうかといふ樫製の櫂を、左右に二挺結びつけてある、櫂の折れ目に鉄環でツギをあてたのもある。
— 小島烏水 『天竜川』 青空文庫
未だ年にすれば沢山ある筈の黒髪は汚物や血で固められて、捨てられた棕櫚箒のようだった。
— 葉山嘉樹 『淫賣婦』 青空文庫
棕櫚の葉の如く、両手の指を、ぱっとひろげたまま、活人形のように、ガラス玉の眼を一ぱいに見はったきり、そよとも動かぬ。
— 太宰治 『春の盗賊』 青空文庫
群集は、刻一刻とその数を増し、あの人の通る道々に、赤、青、黄、色とりどりの彼等の着物をほうり投げ、あるいは棕櫚の枝を伐って、その行く道に敷きつめてあげて、歓呼にどよめき迎えるのでした。
— 太宰治 『駈込み訴え』 青空文庫
しかし四家フユ子は英介氏の腕輪のなかに障害馬のように飛こむと、棕櫚の毛皮のような髪の毛を乱雑にカールした黄色い額の波打際を仰向けにして、ずるそうに彼にわらいかけた。
— 吉行エイスケ 『職業婦人気質』 青空文庫
横手の土塀際の、あの棕櫚の樹の、ばらばらと葉が鳴る蔭へ入って、黙って背を撫でなぞしてな。
— 泉鏡花 『朱日記』 青空文庫
鳥居が一基、其の傍に大な棕櫚の樹が、五|株まで、一|列に並んで、蓬々とした形で居る。
— 泉鏡太郎 『人魚の祠』 青空文庫
ものは棕櫚の毛を引束ねたに相違はありません。
— 泉鏡太郎 『人魚の祠』 青空文庫