術眼
じゅつがん
名詞
標準
文例 · 用例
元来己を捨てるということは、道徳から云えばやむをえず不徳も犯そうし、知識から云えば己の程度を下げて無知な事も云おうし、人情から云えば己の義理を低くして阿漕な仕打もしようし、趣味から云えば己の芸術眼を下げて下劣な好尚に投じようし、十中八九の場合悪い方に傾きやすいから困るのである。
— 夏目漱石 『道楽と職業』 青空文庫
初学のうちは、言はんとする内容の説明に急であつて、ややもすれば平面的描写に陥りやすいですが、かうしたことは、その作者に芸術眼さへあれば、練習によつて自覚的にすくはるる日が来るのであります。
— 野口雨情 『螢の燈台』 青空文庫
七兵衛は、美術眼があるわけでもなんでもないが、奥女中は奥女中らしい気品とうま味が出ないものかなあと、淡い不満をいだいてこの絵を見ているだけのもので、頭の中に往来するのは、やはり昨晩、あれからこれまでの、自分のした仕事の吟味と、咀嚼とであります。
— みちりやの巻 『大菩薩峠』 青空文庫
平子君はつとに東京美術学校で日本画科を専攻せられ、丹青の道においても相当の手腕を持っておられたが、その得意の芸術眼から我が古代芸術史の研究に没頭せられて、実地の観察より法隆寺の到底再建なるべからざる所以を会得せられたのであった。
— 喜田貞吉 『法隆寺再建非再建論の回顧』 青空文庫
それには先ず第一に自分みずからの教養を高め、その美術眼を高めなければならないことになります。
— 北大路魯山人 『陶器鑑賞について』 青空文庫
しからばその美術眼を高めるにはどうしたならばよいでしょうか。
— 北大路魯山人 『陶器鑑賞について』 青空文庫
故に、美術眼を高くするということは、なによりも真先に自然美に親しみ、その美に浸り、鑑賞意欲のそのもとたるべきものを養って、ゆがめられない素直な眼をつくり、あるいはつくりつつ、日本で言えば、段々と慶長以前の美術作品を鑑賞して行くのが、一番理想的ないい方法だと思うのであります。
— 北大路魯山人 『陶器鑑賞について』 青空文庫
と言うのは、私の作ります陶器は殆ど機械を無視して、心の芸として、心の美だけを頼りにし、常に美術眼から見た自然美を親とし、師と仰ぎ、それによって学び、美術価値を至上主義としての陶器を作り出さんとしているからであります。
— ―芸術における人と作品の関係について― 『陶芸家を志す者のために』 青空文庫