陰々
いんいん
形容詞-たる副詞-と
標準
dark and desolate
文例 · 用例
その時裏の山、向うの峰、左右前後にすくすくとあるのが、一ツ一ツ嘴を向け、頭を擡げて、この一落の別天地、親仁を下手に控え、馬に面して彳んだ月下の美女の姿を差覗くがごとく、陰々として深山の気が籠って来た。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
思ふまゝに渦卷き過ぎる濃霧に閉ぢこめられてその鐘の音は陰々として淋しく響いた。
— 有島武郎 『潮霧』 青空文庫
月もなく、日もなく、樹もなく、草もなく、路もない、雲に似て踏みごたえがあって、雪に似て冷からず、朧夜かと思えば暗く、東雲かと見れば陰々たる中に、煙草盆、枕、火鉢、炬燵櫓の形など左右、二列びに、不揃いに、沢庵の樽もあり、石臼もあり、俎板あり、灯のない行燈も三ツ四ツ、あたかも人のない道具市。
— 泉鏡花 『伊勢之巻』 青空文庫
」「はゝあ、」と歎息するやうに云つた時の、旅客の面色も四邊の光景も陰々たるものであつた。
— 泉鏡太郎 『魔法罎』 青空文庫
先に――七|里半の峠を越さうとして下りた一見の知己が居た、椅子の間を向うへ隔てて、彼と同じ側の一隅に、薄青い天鵝絨の凭掛を枕にして、隧道を越す以前から、夜の底に沈んだやうに、煙に陰々として横倒れに寐て居たのが、此の時仁王立ちに成つたのである。
— 泉鏡太郎 『魔法罎』 青空文庫
…… 一時、何となく陰々とした広間が、ぱッとまた明くなりますとね、鶏がくるりと目を覚まして、莞爾笑ったように見えたんですって。
— ――(前題――楊弓) 『ピストルの使い方』 青空文庫
宵月の頃だったのに、曇ってたので、星も見えないで、陰々として一面にものの色が灰のようにうるんでいた、蛙がしきりになく。
— 泉鏡花 『化鳥』 青空文庫
先月の半ば頃|一日晩方の事……」 この時座敷|寂として由井が浜風陰々たり。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫
作例 · 標準
祭りの後、村は静まり返り、人気のない道は陰々と寂しい光景だった。
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曇り空の下、古びた洋館は陰々とたたずみ、不気味な雰囲気を醸し出していた。
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彼女の瞳は、深い悲しみを湛え、陰々と光を失っていた。
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陰々とした森の奥深く、誰も足を踏み入れない場所があった。
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