浜路
はまじ
名詞
標準
文例 · 用例
白粉臭い、汗くさい変な香がこもった中で、自分は信乃が浜路の幽霊と語るくだりを読んだ。
— 寺田寅彦 『竜舌蘭』 青空文庫
信乃が腕をこまねいてうつむいている前に片手を畳につき、片袖をくわえている浜路の後ろに、影のように現われた幽霊の絵を見ていた時、自分の後ろの唐紙がするするとあいて、はいって来た人がある。
— 寺田寅彦 『竜舌蘭』 青空文庫
芸者が臥所へ来た時、君は浜路に襲われた犬塚信乃のように、夜具を片附けて、開き直って用向を尋ねた。
— 森鴎外 『二人の友』 青空文庫
一番目は「里見八犬伝」の蟇六屋敷から円塚山で、団十郎の犬山道節、家橘の犬川荘介、八百蔵の網干左母次郎、芝翫の浜路、松助の蟇六。
— 岡本綺堂 『明治劇談 ランプの下にて』 青空文庫
実際の染之助から、こんなに度々、見詰められては、一分も座に居られなかったに違いない私も染之助が信乃になっているばっかりに、何だか信乃の恋人の浜路にでもなったように、信乃から見詰められる事が胸がわくわくする程嬉しかったのですよ。
— 菊池寛 『ある恋の話』 青空文庫
小説的かも知れんけれど、八犬伝の浜路だ、信乃が明朝は立つて了ふと云ふので、親の目を忍んで夜更に逢ひに来る、あの情合でなければならない。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
然し内の浜路は困る、信乃にばかり気を揉して、余り憎いな、そでない為方だ。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
(私には限らない、当時の貸本屋フワンは誰でもだったが)信乃が滸我へ発足する前晩|浜路が忍んで来る一節や、荒芽山の音音の隠れ家に道節と荘介が邂逅する一条や、返璧の里に雛衣が去られた夫を怨ずる一章は一言一句を剰さず暗記した。
— 内田魯庵 『八犬伝談余』 青空文庫