踏み付け
ふみつけ
名詞
標準
文例 · 用例
「この社をやめて他の会社の社員になりながら、行きがけの駄賃に女を撲って行くなんてわが社の威信を踏み付けにした遣り方だねえ。
— 岡本かの子 『越年』 青空文庫
* 開墾場の小屋を一通り廻り終わると、藤沢は落ち葉を踏み付けて事務所へ戻った。
— 佐左木俊郎 『熊の出る開墾地』 青空文庫
ひとりは密通、一人は裏切り――その嗤いが、微かな余韻のようなものを引き、成戸は、たまらなくなったように地蟲のいる床のうえを踏み付けた。
— 小栗虫太郎 『地虫』 青空文庫
そして、折からの騒ぎにまぎれて、その調帯の上を絶えず踏み付けたのだ。
— 小栗虫太郎 『オフェリヤ殺し』 青空文庫
この世間の理想に對し、相對の理想に對して、欲無限の我を立てむとしつればこそ、逍遙子は星川子がためには萬理想を踏み付けて儼立したるさま、天台一萬八千尺、碧林瑤草、瓊樓玉闕、烟霧の裏にほの見ゆる如しと稱へられ、我がためにはいとも畏き聖教量によりて言を立つと評せられ玉ひしなれ。
— 森鴎外 『柵草紙の山房論文』 青空文庫
文明はあらゆる限りの手段をつくして、個性を発達せしめたる後、あらゆる限りの方法によってこの個性を踏み付けようとする。
— 夏目漱石 『草枕』 青空文庫
小供は大福を踏み付けたような爺さんを見て大変だと思ったか、わーっと悲鳴を揚げてなき出す。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
はるか向うの青田の中に落ちたパラソルを見かえりもせずに、今しがた女が伝って来た畦道の、下駄の痕を踏み付け踏み付け、平気な顔で工学部の前に引返した。
— 夢野久作 『空を飛ぶパラソル』 青空文庫