欠所
けつしょ
名詞
標準
文例 · 用例
昔僭上な役者が硝子張の天井に泳がせて、仰向いて見たのでさへ、欠所、所払ひを申しつかつた。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
その一一の詩に就いてもあまりにその欠所を微細に知り過ぎるが故に他の人の十倍の苦みをも敢て辞さうとは思はないのである。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫
果然彼は墻壁の欠所に吶喊して来た。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
トルストイ伯は理想派詩人にはあらず、彼は理想を抱ける実際派なり、何となれば彼が写すところ、公平無私に農民の状態を描出し、其欠所を隠蔽することを為さゞればなり。
— 北村透谷 『トルストイ伯』 青空文庫
三 前の口碑でたった一つ欠所があるように思われることは、樵夫の夢に現われて伐りかたを伝授したものが、その木になんの縁由もないように話されていることである。
— 佐々木喜善 『東奥異聞』 青空文庫
また近くはつい先頃、江戸の小鼓では押しも押されもせぬ一代の名人観世九郎が、鬱晴らしについ何心なく羽田の沖に釣糸を垂れたばかりに、不愍にも船頭もろとも欠所遠嶋仰せつけられたという、驚くべき例もある。
— 宮本百合子 『津軽の虫の巣』 青空文庫
しからば気の毒ながら我等は他に転宿……当家は遠からず欠所と相成り、一家城外へ追放……そのくらいで済めば、まァ好い方であろう。
— 江見水蔭 『備前天一坊』 青空文庫
願いのままに一応は召抱え、その上にて、即座に切腹仰付けられるという、こうした御内意に定ったのじゃ」「うへ――」「不届なる浪人どもは、それにて始末は着くであろうが、その騙り者の宿を致したる咎に依って、その方半田屋は欠所。
— 江見水蔭 『備前天一坊』 青空文庫