沁々
沁々
名詞
標準
文例 · 用例
こうした寂しい老人や老婦人らが、養老院の一室で骨牌をしながら、互に慰め合ってる異国風景を、外国映画のスクリンで見る時ほど、西洋という国の悲しさと味気なさを、沁々と思わせることはないのである。
— 萩原朔太郎 『老年と人生』 青空文庫
そして満月に近い空の月を沁々と眺め入つた。
— 萩原朔太郎 『月の詩情』 青空文庫
「侘び」とは、前にも他の句解で述べた通り、人間生活の寂しさや悲しさを、主観の心境の底で噛みしめながら、これを対照の自然に映して、そこに或る沁々とした心の家郷を見出すことである。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
「侘び」の心境するものは、悲哀や寂寥を体感しながら、実はまたその生活を懐かしく、肌身に抱いて沁々と愛撫している心境である。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
しかしまた何という沁々とした人生だろう。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
即ち冬の寒い日に、葱などの流れている裏町の小川を表象して、そこに人生の沁々とした侘びを感じているのである。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
河豚汁の宿赤々と灯しけり と、冬の街路に炉辺の燈灯を恋うる蕪村は、裏街を流れる下水を見て易水に根深流るる寒さかな と、沁々として人生のうら寒いノスタルジアを思うのだった。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
それ故にまた蕪村は、冬の蕭条たる木枯の中で、孤独に寄り合う村落を見て木枯や何に世渡る家五軒 と、霜枯れた風致の中に、同じ人生の暖かさ懐かしさを、沁々いとしんで咏むのであった。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫