魔像
まぞう
名詞
標準
文例 · 用例
それゆえにこそ、花のたよりも上野、品川、道灌山からとうに八百八町を訪れつくして、夜桜探りの行きか帰りか、浮かれ歩く人の姿が魔像のような影をひきながら、町は今が人出の盛りでした。
— お蘭しごきの秘密 『右門捕物帖』 青空文庫
だが、もともと自然の悪戯であるとは云え、そうして幡江の心の末端に触れたものが、後々の謎に、どれほどの陰影を添えたか知れなかったのでしたよ」 そうして、幡江に映った心の魔像を消してしまうと、法水の舌は、続いて孔雀の分析に移って行った。
— 小栗虫太郎 『オフェリヤ殺し』 青空文庫
荒田老は、平木中佐の所論の絶対の肯定者として、怪奇な魔像のように動かなかったし、大河無門は、その絶対の否定者として、清澄な菩薩像のように動かなかったのである。
— 第五部 『次郎物語』 青空文庫
この五篇の中では「魔像」が一番面白かった。
— ――「夢鬼」を読みて―― 『蘭郁二郎氏の処女作』 青空文庫
五 最初平次の眼に入った光景は、広間の中央に祀られた、何とも形容のしようのない醜悪怪奇を極めた魔像で、その前と両側には、真っ黒な蝋燭が十三本、赤い焔をあげてメラメラと燃えております。
— 金色の処女 『銭形平次捕物控』 青空文庫
魔像の前には蜥蜴の死骸、猫の脳味噌、半殺しの蛇といった不気味な供物が、足の高い三方に載せて供えられ、その供物の真ん中に据えた白木の大俎板の上には、ピチピチした裸体が仰向けに寝かされて、その側には磨き立てた出刃庖丁が、刃先を下にしてズブリと板の上に突っ立っています。
— 金色の処女 『銭形平次捕物控』 青空文庫
また、ひとしきり奇怪な読経が湧き起って、魔像とお静の四方を、黒装束の人間の輪が、クルクルと廻り始めました。
— 金色の処女 『銭形平次捕物控』 青空文庫
と見ると、焔のような赤い布を纏った、半裸体の四人の美女は、人面獣身の魔像と、金箔を置いたお静を中心にして、あらゆる狂態を尽して乱舞を始めたのです。
— 金色の処女 『銭形平次捕物控』 青空文庫