貸事務所
かしじむしょ
名詞
標準
文例 · 用例
両隣りとソックリの貸事務所になっている北向きの二間半|間口で、表に「H株式取引所員……※善……児島良平……電話四四〇三番」と彫り込んだ緑青だらけの真鍮看板を掛けて、入口の硝子扉にも同じ文句を剥げチョロケた金箔で貼り出していた。
— 夢野久作 『鉄鎚』 青空文庫
天風はその微暗い街を往って、手前が二階建の貸事務所になり、前が印刷屋になった間の巷の口へ往った。
— 田中貢太郎 『文妖伝』 青空文庫
怪人現れる チャンウーの店の隣は、四階建のビルディングになっていて、一階は貿易促進展覧会の会場になっているが、二階からうえは貸事務所になっている。
— 海野十三 『少年探偵長』 青空文庫
山田忍道の店[自注7]も、先生の気合から物をつくる術はないものと見えて、あの日本橋の角は貸事務所か陸軍病院になりそうだそうです、伊勢丹もやはり。
— 一九四〇年(昭和十五年) 『獄中への手紙』 青空文庫
粗末なこの貸事務所の鱗形のスレート屋根の上でも、盛んに雪は解けているのだろう。
— 宮本百合子 『今朝の雪』 青空文庫
そして鉄道線路のガードを前にして、場末の町へでも行ったような飲食店の旗ばかりが目につく横町へ曲り、貸事務所の硝子窓に周易判断|金亀堂という金文字を掲げた売卜者をたずねた。
— 永井荷風 『つゆのあとさき』 青空文庫
丸の内の一|郭、赤煉瓦貸事務所街のとある入口に、宗像研究室の真鍮看板が光っている。
— 江戸川乱歩 『悪魔の紋章』 青空文庫
ある日の事、使いに出た帰りがけ、例の空きビルディングの表側の大通りを歩いていますと、そのビルディングのすぐ隣に、三菱何号館とか云う、古風な煉瓦作りの、小型の、長屋風の貸事務所が並んでいるのですが、そのとある一軒の石段をピョイピョイと飛ぶ様に昇って行く、一人の紳士が、僕の注意を惹いたのです。
— 江戸川乱歩 『目羅博士の不思議な犯罪』 青空文庫