研ぎ出し
とぎだし
名詞
標準
文例 · 用例
それで、蛇はひがんで、のたのた這い廻るし、蛙はがあがあ騒ぐのだし、蜂はぶんぶん腹立ちまぎれに螫しに来るし、狼や獅子は、鋭い牙を研ぎ出したのだよ。
— 岡本かの子 『トシオの見たもの』 青空文庫
夜の降りが強かつたので秋の空は研ぎ出したやうに冴えて見える。
— 長塚節 『隣室の客』 青空文庫
からりとした椽を通り越して、奇麗な木理を一面に研ぎ出してある西洋間の戸を半分明けると、立て切った中は暗い。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
研ぎ出したような月は中庭の赤松の梢を屋根から廊下へ投げている。
— 広津柳浪 『今戸心中』 青空文庫
前面に高瀬の谷を隔てて屏風の如く聳立する立山後立山二大山脈の高峰喬岳は、昨夜の狂態を面目なく思っているかのように、雲の厚衾をすっぽりと被って巓は見えないが、研ぎ出したように白い無数の雪渓は紫紺の膚にキラリと光っている。
— 木暮理太郎 『秩父宮殿下に侍して槍ヶ岳へ』 青空文庫
御殿女中が花見にでも行くようにこう云うものを研ぎ出しの提げ重の抽出しへ入れて、飲み物から摘まみ物までわざわざ京都から運んで来るのでは、茶屋に取っても有り難くない客であろうが、お久もずいぶん気骨が折れるに違いあるまい。
— 谷崎潤一郎 『蓼喰う虫』 青空文庫
つまり大阪では、成るべく人間の血色に近く見せようとして顔の胡粉をわざとつや消しにするのだが、それと反対に出来るだけ研ぎ出してピカピカに光らせる淡路の方では、大阪のやりかたを細工がぞんざいだと云うのである。
— 谷崎潤一郎 『蓼喰う虫』 青空文庫
色漆を用いて雲形の斑紋を作り、それを研ぎ出して仕上げます。
— 柳宗悦 『手仕事の日本』 青空文庫