遁込
遁込
名詞
標準
文例 · 用例
飜然路地へお蔦が遁込むと、まだその煙は消えないので、雑水を撒きかけてこの一芸に見惚れたお源が、さしったりと、手でしゃくって、ざぶりと掛けると、おかしな皮の臭がして、そこら中水だらけ。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
魂が砕けたように、胸へ乱れて、颯と光った、籠の蛍に、ハット思う処を、「何ですね、お前さん、」 と鼻声になっている女房に剣呑を食って、慌てて遁込む。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
鳥の羽に怯かされた、と一の谷に遁込んだが、緋の袴まじりに鵯越えを逆寄せに盛返す……となると、お才さんはまだ帰らなかった。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
多勢に一人、あら切抜けた、図書様がお天守に遁込みました。
— 泉鏡花 『天守物語』 青空文庫
と、あ、と声を内へ引いて遁込んで、けたたましい足音で、階子壇を駆上がると、あれえあれえと二階を飛廻って欄干へ出た。
— 泉鏡花 『半島一奇抄』 青空文庫
舞台を取巻いた大勢が、わやわやとざわついて、同音に、声を揚げて皆笑った……小さいのが二側三側、ぐるりと黒く塊ったのが、変にここまで間を措いて、思出したように、遁込んだ饂飩屋の滑稽な図を笑ったので、どっというのが、一つ、町を越した空屋の裏あたりに響いて、壁を隔てて聞くようにぼやけて寂しい。
— 泉鏡花 『陽炎座』 青空文庫
皆様のお穿ものが、」 成程、暴風雨の舟が遁込んださながらの下駄の並び方。
— 泉鏡花 『第二菎蒻本』 青空文庫
ぐッすり寐込んででもいようもんなら、盗賊が遁込んだようじゃから、なぞというて、叩き起して周章てさせる。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫