美艶
びえん
名詞
標準
文例 · 用例
弁者は仔細らしく煙を吹きて、「滝の白糸というのはご存じでしょうな」 乙者は頷き頷き、「知っとります段か、富山で見ました大評判の美艶ので」「さよう。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
…… 天守の主人は、御身が内儀の美艶な色に懸想したのぢや。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
群賊怪しんで捨て去られた屍を開き、妙光女魂既に亡たりといえども、容儀儼然活けるがごとく、妍華平生に異ならざるを覩、相いいて曰く、この女かくまで美艶にして、遠く覓むるも等類なしと、各々|染心を生じ、共に非法を行いおわって、礼金として五百金銭を屍の側において去った。
— 田原藤太竜宮入りの話 『十二支考』 青空文庫
(奈良) 鷹美艶 これは小学校の女先生の報告です。
— 宮本百合子 『新女性のルポルタージュより』 青空文庫
況してや舞台好みの文金高島田、化粧をした顔の美艶、竜次郎は恍惚たらざるを得なかった。
— 江見水蔭 『死剣と生縄』 青空文庫
美艶香には小町紅、松金油の匂ひ濃やかにして髪はつくもがみのむさむさとたばね、顔は糸瓜の皮のあらあらしく、旅客をとめては……」云々と筆を弄しているが、名所図会という名所図会には、この駅路の遊君を不美人に描いたのは一つもない。
— 流転の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
此の如くなるを以て、情は亦人間の萬事萬行に就て、多少の發動をなす者にて、凡て無情の者金石草木の如きも、彼には情無しと雖も、之を見る人には必ず多少の情を攪動する者にて、譬へば金銀の光澤を觀て其美艶を愛し、土石の山水を觀て其幽閑を愛し、草木花卉の如きも亦然るが如し。
— 西周 『情智關係論』 青空文庫
そして、繻子鬢のくずれを手早く梳き返し、美艶香や松金油を溶きはじめたのは、もう恋のほかなにものもなく、一途に大津とやらへ行って、法月弦之丞に会うつもりであろう。
— 上方の巻 『鳴門秘帖』 青空文庫