蒼顔
そうがん
名詞
標準
文例 · 用例
あれでも価値にしたら今じゃよっぽどするでしょう」 昔し島田は藤田東湖の偽筆に時代を着けるのだといって、白髪蒼顔万死余云々と書いた半切の唐紙を、台所の竈の上に釣るしていた事があった。
— 夏目漱石 『道草』 青空文庫
彼方はるかに白浪の咆ゆる所、檣折れ舷砕けたる廃船の二つ三つ漂へるはバルチツクの海ぞ、そこの岸辺に近く、嘗て実弾の祝砲を見舞はれたる弾痕の壁の下、薄暗き深宮に潜々乎として其妻と共に落涙又落涙、悲しげなる声をあげて祈り、祈りては又泣く一箇|蒼顔痩躯の人を見ずや。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
魯迅氏は昨夜から改造の原稿執筆のため眠らずとのこと、蒼顔、髯濃く、歯並美し。
— 横光利一 『欧洲紀行』 青空文庫
刀痕の深い左膳の蒼顔、はや生き血の香をかぐもののごとく、ニッと白い歯を見せた。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
きょうわたしがここへ来たのは――わたしにとっては、感謝すべき雨風だ」 ニコリともしない源三郎の蒼顔に、お蓮様は、平然たる眼をすえて、「あら、では、この雨の中を、わざわざお訪ねくだすったというわけではないんですのね」 と、チラリと門之丞に視線を投げた。
— こけ猿の巻 『丹下左膳』 青空文庫
「何処をやられたのです」と訊ねると、「膝ぢや」とそこを押へながら皺の多い蒼顔を歪める。
— 原民喜 『夏の花』 青空文庫
「何処をやられたのです」と訊ねると、「膝じゃ」とそこを押えながら皺の多い蒼顔を歪める。
— 原民喜 『夏の花』 青空文庫
「阿母よ榎本氏に屡々行くこと勿れ、彼れに求むるの嫌あれば」と曰ひたる蒼顔の青年は此時より既に自ら其力を信じたりき。
— 山路愛山 『明治文学史』 青空文庫