百端
ひゃくたん
名詞
標準
文例 · 用例
牌ありて曰く周夷王所賜錦三百端と。
— 泉鏡太郎 『唐模樣』 青空文庫
事の方は事情であるから、千差万別が限りなく、変化百端動いて止まざるものであるが、物の方は、これも万物と云つて際限なく数多いものであるが、はるかに静的である。
— 幸田露伴 『些細なやうで重大な事』 青空文庫
人の社會に在つて遭遇する事象は百端千緒であるが、一般俗衆がやゝもすれば發する言語の『福』といふものは、社會の海上に於て、無形の風力によつて容易に好位置に達し、又は權勢を得、富を得たるが如き場合を指すので、彼は福を得たといふものは、即ち富貴利達、若くは富貴利達の斷片的なるものを得たといふのである。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
戰陣のことに關してのみならず、單に氣を望んで、よつて以て禍福旺衰百端千般のことを考ふるの術、即ち廣義の望氣の術もまた早く支那に行はれて居た。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
ただ拘泥せざるを特色とする、人事百端、遭逢纏綿の限りなき波瀾はことごとく喜怒哀楽の種で、その喜怒哀楽は必竟するに拘泥するに足らぬものであるというような筆致が彼らの人生に齎し来る福音である。
— 夏目漱石 『写生文』 青空文庫
慶喜の人物を評して、「譎詐百端の心術」の人であるとなし、賢い薩州侯の公論を至極公平に受けいれることなぞおぼつかないと考え、ことに慶喜が懐刀とも言うべき水戸出身の原|市之進とは絶えざる暗闘反目を続けていたのも薩摩の大久保一蔵だ。
— 第一部下 『夜明け前』 青空文庫
然るに日本に於ては趣を異にし、男子女子の為めに配偶者を求むるは父母の責任にして、其男女が年頃に達すれば辛苦して之を探索し、長し短し取捨百端、いよ/\是れならばと父母の間に内決して、先ず本人の意向如何を問い、父母の決したる所に異存なしと答えて、事始めて成るの風なり。
— 福沢諭吉 『新女大学』 青空文庫
騒音雑然、人事百端とも申すべき俗世界の世の中から、足一たびこの能楽の境域にはいりますと、そこには幽雅な楽器が、わたくしたちの耳塵を払って鳴り響き、典麗高華な色彩や姿態が、鷹揚に微妙に動作いたします。
— 上村松園 『「草紙洗」を描いて』 青空文庫