車蓋
しゃがい
名詞
標準
文例 · 用例
と思うと、白羽の矢が一つ飛んで来て、青糸毛の車蓋をかすめてすぎた。
— 岡本綺堂 『玉藻の前』 青空文庫
薄い月は高い車蓋を斜めにぼんやりと照らしているばかりで、低く這って来る牛の影も、月に背いた車の片側も、遠くからはっきりとは見えないので、さながら牛のない片輪車が自然に揺らめいて来るかとも怪しまれた。
— 岡本綺堂 『玉藻の前』 青空文庫
ミサ子は傘なしで、車蓋の濡れ光るタクシーの流れを突切り、丸ビルへかけ込んだ。
— 宮本百合子 『舗道』 青空文庫
その上に又、御庭に引き据ゑた檳榔毛の車が、高い車蓋にのつしりと暗を抑へて、牛はつけず黒い轅を斜に榻へかけながら、金物の黄金を星のやうに、ちらちら光らせてゐるのを眺めますと、春とは云ふものゝ何となく肌寒い気が致します。
— 芥川龍之介 『地獄変』 青空文庫
十八 火は見る/\中に、車蓋をつゝみました。
— 芥川龍之介 『地獄変』 青空文庫
その上に又、御庭に引き据ゑた檳榔毛の車が、高い車蓋にのつしりと暗を抑へて、牛はつけず黒い轅を斜に榻へかけながら、金物の黄金を星のやうに、ちらちら光らせてゐるのを眺めますと、春とは云ふものゝ何となく肌寒い氣が致します。
— 芥川龍之介 『地獄變』 青空文庫
斯くして予はかの肥大|豕に似たる満村恭平の如く、車窓の外に往来する燈火の光を見、車蓋の上に蕭々たる夜雨の音を聞きつつ、新富座を去る事|甚遠からずして、必予が最期の息を呼吸す可し。
— 芥川龍之介 『開化の殺人』 青空文庫
あなたの眼には見えますまいけれども、どうです、実に怖ろしい唐傘のような雲が湧き上ったことを、これこんなに灰が降って来ました」 こう言ってお雪ちゃんは、東の空に濛々と立ちのぼる車蓋の如き雲を眺めながら、弁信の法衣の袖にかかるヨナを、しきりに払い除けてやっていました。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫