稲妻形
いなずまがた
名詞
標準
文例 · 用例
そこを通って、両方の塀の間を、鈍い稲妻形に畝って、狭い四角から坂の上へ、にょい、と皺面を出した…… 坂下の下界の住人は驚いたろう。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
キャフェの興奮が消えて来た新吉の青ざめた眼に稲妻形に曲るいくつもの横町が映った。
— 岡本かの子 『巴里祭』 青空文庫
まだ鉄砲や鑓を持つてゐる十四人は、詞もなく、稲妻形に焼跡の町を縫つて、影のやうに歩を運びつつ東横堀川の西河岸へ出た。
— 森鴎外 『大塩平八郎』 青空文庫
――稲妻形に段々を下りるときは、むやみに下りるばかりで、いくら下りても尽きないのみか、人っ子一人に逢わないものだから、はなはだ心細かったが、はじめて作事場へ出て、人間に逢ったら、大いに嬉しかった。
— 夏目漱石 『坑夫』 青空文庫
黄葉と枯枝の隙間を動いてくる彼らの路は、稲妻形に林の裡を抜けられるように、また比較的急な勾配を楽に上られるように、作ってあるので、ついそこに見えている彼らの姿もなかなか庭先まで出るのに暇がかかった。
— 夏目漱石 『明暗』 青空文庫
――ガラ、ガラッと、ウイスキーの空瓶が二、三カ所に稲妻形に打ち当って、棚から通路に力一杯に投げ出された。
— 小林多喜二 『蟹工船』 青空文庫
ときどき一寸ほどの幅の割れ目が稲妻形に氷の面を走っていた。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
つまり、まっすぐ一直線には登り得られず、稲妻形に登ってゆくのだ。
— 豊島与志雄 『高千穂に思う』 青空文庫