汽
き
名詞
標準
文例 · 用例
平生は鉄工所でどんがんする鎚の音、紡績会社の器械のうなり、汽笛の響、有らゆる諸工場の雑多な物鳴り等、大都会の騒々しさも、今日は一切に耳に入らない。
— 伊藤左千夫 『大雨の前日』 青空文庫
その郷里は汽車場までは七八里もあるという辺鄙でありながら、絶えず何かを贈っている。
— 伊藤左千夫 『正岡子規君』 青空文庫
汽車の窓に青田のながめ心ゆくさまなり。
— 伊藤左千夫 『滝見の旅』 青空文庫
今度は陸路市川へ出て、市川から汽車に乗ったから、民子の近所を通ったのであれど、僕は極りが悪くてどうしても民子の家へ寄れなかった。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
大路ゆく辻占うりのこゑ、汽車の笛の遠くひゞきたるも、何とはなしに魂あくがるゝ心地す。
— 樋口一葉 『月の夜』 青空文庫
汨羅の屈原ならざれば、恨みは何とかこつべき、大川の水清からぬ名を負ひて、永代よりの汽船に乘込みの歸國姿、まさしう見たりと言ふ物ありし。
— 樋口一葉 『われから』 青空文庫
題のない歌南洋の日にやけた裸か女のやうに夏草の茂つてゐる波止場の向うへ ふしぎな赤錆びた汽船がはひつてきたふはふはとした雲が白くたちのぼつて船員のすふ煙草のけむりがさびしがつてる。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
商人よ港に君の荷物は積まれさうして運命は出帆の汽笛を鳴らした。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫